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台風14号−「こんなことになるとは」

本紙掲載日:2022-09-20
8面

住宅、店舗など複数浸水

◆住民ら、途方に暮れ片付け−延岡市富美山町

 延岡市富美山町では、康芝園グラウンド周辺一帯が冠水し、複数の住宅や店、富美山西区公民館などが床上または床下浸水の被害に遭った。

 このうち、隣り合う住宅など約10世帯が床上浸水した一帯では19日午前、被災した住民が協力し合い、1軒ずつ、水に漬かった畳や家財道具を運び出していた。

 19日朝、避難先から帰宅した住民らは「本当に悲惨」「言葉にならなかった」と振り返り、屋外に運び出した家財道具の山を指しながら「畳も床も全部やり直さないと」と途方に暮れた様子。「床上は想定もしていなかった」との声も聞かれた。康芝園グラウンドと道を挟んだ真向かいの住宅でも、複数が床上浸水の被害を受け、道路沿いには水にぬれた畳や家財道具が並んでいた。

 床上30センチほど浸水したという50代夫婦は、避難するか迷っていた18日午後11時30分ごろ、水が入ってきたという。事前に2階に物を避難させ、水が入ってきてからは急いで畳を上げるなどしたが追い付かず、「まさかこんなになるとは。がっかり」と振り返った。同所は19日午前5時ごろ、大人の腰の高さまで水が来ていたという。


◆大内谷川が氾濫、収穫間近の稲被害−延岡市須佐町、住宅の浸水被害なく

 延岡市須佐町は、18日深夜から19日明け方にかけて北川支流の大内谷川が氾濫。北川本流からの越水もあり、19日午前6時30分ごろには、田んぼや牧草地が水深2・5メートルほど浸水した。一面は海のようになったものの、住居はいずれも高台にあり浸水被害はなかった。

 水が引いたの約7時間後で、漂流していたごみや木片が田畑に堆積し、収穫間近の稲が折れ曲がるなどした。また、イノシシの侵入を防ぐ柵も一部が支柱ごと壊れた。

 黒木守区長は「早ければ10日もすれば収穫できる米もあった。楽しみにしていただけに、本当に残念」と話した。


◆土砂崩れ、倒木…停電も−西臼杵3町にも大きな被害

 台風14号は、西臼杵郡(高千穂、日之影、五ケ瀬町)にも甚大な被害をもたらした。

 高千穂町内では、向山で倒木による通行止め、上岩戸で路肩の決壊が数カ所、土砂崩れで牛舎と親牛が流されるなどの被害が確認された。町によると、町内8カ所に開設した指定避難所には一時、183世帯318人が避難したという。

 日之影町では、指定避難所14カ所に一時、170世帯300人が避難した。町内各所で倒木や冠水が相次ぎ、19日未明には全世帯の81・5%に当たる約2060戸で停電。国道218号では道路脇の斜面が崩れるなどした。

 五ケ瀬町では、国道218号津花トンネルの高千穂町側で土砂崩れが発生。流出した土砂が道路をふさぎ、高千穂―五ケ瀬町間が一時、全面通行止めとなった。また、河川の増水で町道数カ所が崩壊するなどした。町内5カ所の指定避難所には一時、121世帯220人が避難したという。


◆日之影町の特産栗が強風で落下

 日之影町七折で栗を育てている飯干忠秋さん(83)方では、ほとんどの実が強風により落下。早朝から食べられそうな実の回収作業に追われた。

 毎年、親戚らに渋皮煮などを作って配っているといい、「台風の被害は毎年あるが、今年は特に大きい。できればもう来ないでほしいけど」と落ちた栗を拾いながら残念そうに話していた。


◆日之影町の電器店が浸水

 日之影町岩井川の男性(63)が営む電器店では店舗裏の排水溝があふれ、建屋内が2、3センチほど浸水。床に置いてあった空気清浄機や炊飯器など総額50万円近くが被害を受けた。

 男性は「メーカーがどこまで保障してくれるか。今までこんなことはなかったから、床から商品を上げておくという考えがなかった」と肩を落とした。


◆強風に飛ばされごみなどが散乱−高千穂町の中心部

 高千穂町三田井の中心街では、歩道や路上に強風で飛ばされたとみられるごみステーションやバス停の標識などが散乱し、住民らが片付けに追われた。

 19日午前9時ごろ、自宅前の落ち葉を掃いていた女性(61)は「(きのうは)雨風が強くて本当に怖かった。できればもうこんな思いはしたくない」と声を震わせていた。


◆田んぼが土砂に飲まれる

 高千穂町上岩戸の60代男性方では、約0・6アールの田んぼで育てていた米12俵分が崩れた土砂に飲まれた。

 19日早朝に被害を確認し、午後5時すぎまで片付けに追われていた男性は「昨晩は何ともなかったのに。片付けが終わっても、田んぼを元の状態に戻すのがまた大変。掛かる費用を考えるともう」と頭を抱えた。

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