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ココカラSDGs−第5回「持続可能なまちづくり×SDGs」(上)

本紙掲載日:2021-08-24
6面

▽〃物流業界の黒船〃事業化へ、世界中においしい野菜を―旭化成
▽実証実験、ぜひ延岡で―読谷山市長

 今注目のSDGs(エスディージーズ)をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるFMのべおかの番組「ココカラSDGs」の第5回「持続可能なまちづくり×SDGs」が、19日に放送された。内容を一部抜粋し、2回に分けて紹介する。

 アドバイザーはSDGsコミュニケーターの難波裕扶子さん(48)=シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西=。ゲストは延岡市の読谷山洋司市長(57)、旭化成マーケティング&イノベーション本部マネジャーの井手上尚弘さん(40)。なお、収録は6日に行われ、井手上さんは東京都内の旭化成本社からリモート出演した。


−−第5回のテーマは「持続可能なまちづくり×SDGs」です。まずは井手上さん、自己紹介をお願いします。

〈井手上〉入社後5年間は、延岡市で半導体の製品検査に携わってきました。半導体はスマートフォンはもちろん、ほぼすべての電化製品に使われています。「不良品を社会に出さないための最後のとりでである」という意識を強く持ち、製品検査の環境を構築してきました。入社10年後からは新規事業を創出する業務に携わっています。
実は私の妻は延岡市出身で、妻の実家が代々農業をしていたこともあり、その大変さを見聞きする機会が多くありました。農業に関わる新規事業に取り組みたいと思うようになり、現在、食事や農業に関わる旭化成の「食農プロジェクト」に携わっています。

−−旭化成が「食農プロジェクト」を立ち上げた背景を教えてください。

〈井手上〉世界では今、貧困、飢餓、気候変動による環境問題に苦しんでいる人がたくさんいます。その原因をたどっていくと、食農の分野で解決できることが多くあることが分かっています。例えばアフリカというと、飢餓で痩せこけた人たちの姿をイメージしがちです。ところが今、食糧支援などが進み飢餓で苦しむ人たちはずいぶん減ってきています。一方で、その食糧支援の90%以上は長期間保存できる穀物です。つまりビタミンやミネラルなどの栄養が不足しているのです。
人間は2歳までにしっかり栄養を取らなければ、脳や体の発達に遅れが生じ、その後いくら栄養を補っても回復しません。集中力の低下は就学率や就職率の低下につながり、負の連鎖となって次の世代の貧困や飢餓、さらには紛争の種となっていくのです。また、作物を栽培するために地下水を無計画にくみ上げて砂漠化を進めてしまうなど環境破壊をも引き起こしています。
旭化成のグループ理念は「世界の人びとの〃いのち〃と〃くらし〃に貢献します」。世界中に鮮度が良く栄養価も高い、おいしい野菜を届けることに貢献したい。そういった思いで旭化成の「食農プロジェクト」は立ち上がりました。

−−「食農プロジェクト」について具体的に教えてください。

〈井手上〉大きく二つのテーマで取り組んでいます。一つは「野菜の鮮度を保持した輸送・保管」、もう一つは「未利用資源を活用した栽培」です。
特に「野菜の鮮度を―」については今年度、事業化する予定で進めています。皆さんは野菜を冷蔵庫で保存していると思いますが、なぜ冷蔵庫で保存するのかご存じですか。野菜は収穫した後も生きているため、低い温度で冷やすことによってエネルギーの消費や蒸散、酵素や微生物による分解や腐敗を抑えているのです。
宮崎県で収穫された野菜を関西、関東圏に運ぶ時も同じです。野菜の多くは冷蔵トラックで輸送されています。満載された野菜を冷やすには相当なエネルギーを使わなければなりません。運転手が休憩している時でも冷蔵システムの電源を切ることはできません。
そこで、「冷蔵トラックを使わずに運べないか」と考え出したのが「気密性の高い断熱ボックスに入れて運ぶ」という新しい輸送方法です。旭化成にはヘーベルハウスなどでも使われているネオマフォームという高性能な断熱材があります。あらかじめ冷やした野菜をこの断熱ボックスに入れるだけで、外の温度が少々高くても、野菜はすぐには温まりません。
実際、断熱ボックスに入れて運んだ結果、むしろ冷蔵トラックよりも鮮度が良い状態で運べることが分かりました。また、野菜は品目によって保存に適した温度が異なります。例えばブロッコリーは0度が適温ですが、キュウリは10度が適温です。キュウリを0度で保存すると低温障害を引き起こし、逆に10度を超えると劣化していきます。冷蔵トラックでは、このように品目ごとに温度を制御することはできません。あらかじめ最適な温度に冷やした品目を温度帯ごとに断熱ボックスに入れることで、冷蔵システムのない一般的なトラック、貨物船、貨物列車などでも運べるようになります。
例えば、宮崎県から関東圏への輸送を考えたとき、冷蔵トラックから一般のトラックや貨物船などに置き換えることで、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出が、最大69%抑制できることが分かっています。

〈読谷山〉人の暮らしを快適にするヘーベルハウスの技術が、人の食にも活用できるという、その発想がすごいですね。

−−どのような手応えをお感じですか。

〈井手上〉物流業界の関係者からは「魔法のボックス」「物流業界に黒船が来た」などと表現されています。特に黒船は脅威でしょうから、業界に認めてもらえたという実感が得られてうれしかったです。

−−次に、もう一つの「未利用資源を活用した栽培」について教えてください。

〈井手上〉化学肥料に依存しない栽培方法を目指しています。といっても、化学肥料が悪いと言うつもりはありません。化学肥料は飢餓をなくすためにも、なくてはならない技術です。ただ、使い方を誤ると土に含まれる微生物が失われ、微生物によって成り立っていた生態系が崩れて、土の保水力や通気性などの機能が失われます。私たちは卵の殻のような未利用資源を活用して、化学肥料相当の栽培効率を実現する液体肥料製造技術の社会実装を目指し、国の研究機関とも連携して開発を進めています。

−−どのような社会課題の解決につながるとお考えですか。

〈井手上〉私たちが開発を進めている液体肥料の製造には、工場などが不要です。誤解を恐れずに言えば、卵の殻に付着している卵白と、空のペットボトル、種菌の入った養液、そしてノウハウがあれば、どこでも化学肥料と同等の効果の肥料が作れるのです。
この栽培方法を取り入れることで、例えば化学肥料を購入することができず、家畜のふんなどを使って野菜を栽培している貧困地域でも、栄養価の高い野菜を効率的に栽培することができます。世界初となる、日本生まれの新しい栽培方法です。世界中の子どもたちが小麦粉だけでなく、おいしい野菜などをたくさん食べて、元気に遊んで学んで、大きくなったら好きな仕事ができる。そんな世界に貢献していきたいと考えています。

〈難波〉「昨日まで世界になかったものを」が旭化成のグループスローガンです。ある座談会で「多様な人財(じんざい)の宝庫を活用することが、最大の旭化成らしさだ」と聞いたことがあります。

〈井手上〉「昨日まで世界になかったものを」つくるということは、技術的なハードルもさることながら精神的なハードルも高いと思っています。
例えば、「断熱ボックスに入れたら野菜を劣化させずに運べるのではないか」と考えた時も、業界の関係者からは「普通のトラックで運べるわけがない。すぐに腐ってしまう」「そんなことができるなら誰かがすでにやっている」などのご意見をいただきました。でも、社内で頭ごなしに否定する人はいませんでした。
旭化成には「失敗しても次につなげれば良い」という風土があるように感じています。実は、今回紹介させていただいた二つのテーマ以外にも、いろいろと提案しており、期待する結果が得られなかったものも多々あります。それにもかかわらず、上司は「業界の人が言うのだからやっても無駄だ」ではなく、やらせてくれた。だから今があります。私も部下を頭ごなしに否定することはしませんし、そういった風土が脈々と引き継がれているから、失敗を恐れずに挑戦できるし、だから多様な人財が生まれるのではないでしょうか。

−−ここまでの井手上さんの話を聞いて、読谷山市長はどうお感じですか。

〈読谷山〉そういう素晴らしい風土を持った企業が、延岡市と深い縁を持っていることは本当にうれしいことです。そしてぜひ、断熱ボックスの実証実験を延岡市で実施していただきたい。実は延岡市では、ここで捕れたイセエビとヒオウギガイを生きたままシンガポールへ輸送できないか検討しているのですが、技術面でのハードルがクリアできずにいます。ぜひ、力を貸していただきたい。

(つづく)

【SDGs(エスディージーズ)】
Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」など17の目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成され、2015年9月の国連サミットで加盟193カ国が合意して採択された。発展途上国だけでなく先進国を含めて取り組むもので、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、30年までの達成を目指す。四角形のカラフルな17のアイコンが知られている。

■再放送■26日午後8時、29日午前11時からの2回

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