のべおか天下一薪能－空中に美しく土蜘蛛の糸

本紙掲載日：2022-10-10

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３年ぶりに延岡城址の「千人殺し」の石垣を背景に公演した「第２５回のべおか天下一薪能」。能「土蜘蛛」では、片山九郎右衛門さんが放った千筋の糸が観客の目を奪った

感動、幽玄の世界へ－３年ぶり石垣背景に

　第２５回のべおか天下一薪能（てんがいちたきぎのう）が８日、延岡市の延岡城址（し）二の丸広場で行われた。３年ぶりに「千人殺し」の石垣を背景にした公演となり、観世流能楽師シテ方の片山九郎右衛門さんらが熱演。訪れた約８００人を幽玄の世界へといざなった。主催は、ＮＰＯ法人のべおか天下一市民交流機構（松下宏理事長）、市、市教育委員会。

　能「土蜘蛛（つちぐも）」は、２００１年以来２度目の上演。病で伏せっている源頼光（みなもとのらいこう）のもとへ、薬を持って参上する胡蝶（こちょう）役を鮎川愛美さん（延岡星雲高３年）、頼光の従者役を川﨑将宏さん（延岡中１年）が務めた。最大の見せ場となる土蜘蛛が頼光の家臣に千筋（ちすじ）の糸を投げる場面では、心配された強風もなく、土蜘蛛を演じた片山さんが放った糸が空中にダイナミックに広がり、観客はその美しさに目を奪われた。

　能「巻絹（まきぎぬ）」は、今回が初めての上演。音無天神で和歌を詠み、熊野本宮へ絹を届ける期日を過ぎた罪で勅使から縛り上げられた男の許しを得たみこが、和歌の徳をたたえて神楽を奉納し、神懸かりとなり激しく狂い舞うさまを、片山さんが静かに熱く演じた。

　大蔵流狂言師の茂山千五郎さん、茂山茂さん、網谷正美さんによる狂言「蝸牛（かぎゅう）」は、やぶで寝ていた山伏をカタツムリと勘違いする太郎冠者とその主人の物語。息の合った掛け合いやリズミカルな動きで会場の笑いを誘った。また、市内の小学１年生－大学２年生５人による仕舞も披露された。

　日向市から訪れた足立佳代さん（６８）は今回で５回目の観覧。「天下一薪能は延岡の子どもたちが出演するのが素晴らしいところ。これからも続けてほしい」。同じ中学校の友人同士で訪れた甲斐彩羽さん（１５）は「元々、日本文化が好きで以前から薪能に興味があった。初めて見たが、いい経験になった」。石田千夏さん（１５）は「初めて見た。（狂言など）笑えるところがあって楽しかった」と話した。

　同薪能を第１回からプロデュースする片山さんは「私はもちろん、皆さんも城山でやりたいという思いは一緒だったと思います。今年は初年の時のように月も浮かんでおり、本当に感動的でした」。松下理事長は「３年ぶりに城山で開催でき、すごく感動しました。風がやみ、土蜘蛛の糸がきれいに広がっていて夢みたいでした」と振り返った。（７面に関連記事）