和牛オリンピック・連覇への道、県代表牛への思い（８）
本紙掲載日：2022-10-03
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猛勉強でつかんだ切符−井植計二さん＝日之影町見立
◆全共優勝、父が逝去−「同じ所に」、高まる思い
「申し訳ないですが、新聞もテレビも取材は全てお断りしているんですよ」。第１２回全国和牛能力共進会鹿児島大会の４区（繁殖雌牛群）に本県代表として出品する日之影町見立の井植計二さん（５０）は、かたくなな姿勢を貫いている。そこには集中を切らせない強い思い入れがあった。
井植さんの父盛行さんは数々の品評会で高評価を得てきた県内屈指の畜産家で、２００７年の第９回全国和牛能力共進会（全共、鳥取県）では、４区（４頭一組の系統雌牛群）で全９部門を通してのグランドチャンピオンを獲得した。
１２年の第１０回全共に向けた県審査会（８月２３、２７日）にも西臼杵郡代表に名を連ねたが、急な病気の悪化でその年の９月に６８歳で逝去。計二さんは高千穂町内の勤め先を辞めて家業を継いだ。
畜産どころか農業自体が素人同然で、田植え機も乗りこなせず、牛の世話は助産師らを見よう見まねで勉強。父のように高みを目指すつもりはなかったが、周囲の期待は大きかった。
ことあるたびに父の話をされ、笑ってごまかす日々が続いていた中、「盛行の子だろうが。何というざまか」と地元農家の先輩からぶつけられた言葉が心に火を付けた。
それからというもの、牛について猛勉強を重ね、今回ついにつかんだ全共の切符。手渡されたゼッケン番号を見て「鳥肌が立った」。父盛行さんが１５年前の鳥取全共で背負ったのと同じ「２８」番だった。
くしくも出品牛は盛行さんがグランドチャンピオンに輝いた「たかひめ９」の直系「たかひめ９の９」。運命的な条件がそろい、「父と同じ所に並びたい」との思いは日々高まっている。
生え替わり時期となった毛をより黒くするため、朝晩の洗い込みや母と２人の農家で、田畑の草刈りだけでも半日かかるなど多忙な日々が続くが、出品牛の世話に専念するため、この秋は飼料米の収穫も見送る覚悟だ。