和牛オリンピック・連覇への道、県代表牛への思い（２）

代表、五ケ瀬町から３０年ぶり−興梠大志さん＝五ケ瀬町桑野内

◆県内農家の経営安定のために

　「この牛（ひむか２）を初めて見た時、不思議と勝つ姿が想像できたんです」。８月に小林市で行われた全国和牛能力共進会（全共）県代表牛決定検査会で、五ケ瀬町から３０年ぶりの代表に選ばれた興梠大志さん（４７）＝同町桑野内＝は牛に手を添えてはにかむ。

　郡内の畜産農家で結束し、種牛４頭、肉牛３頭の総合評価で競う６区（種牛）に出場。４人で１０月の全共鹿児島大会行きを決めた。チーム最年長でＪＡ高千穂地区五ケ瀬支所の畜産指導員を務める大志さんは主軸としても欠かせない存在だ。

　自身の名前に由来する「大志牧場」の３代目。１３年前に亡くなった父・光一さんから実家の離れにある牛舎を継ぎ、同ＪＡに勤めながら母・幸子さん（７１）と二人三脚で母牛１９頭、子牛１２頭を世話している。

　二足のわらじは多忙を極め、これまで全共に出品する余力はなかった。それでも「ずっと出たいと思っていた」。同ＪＡ畜産青年部の協力を得て、早朝の運動や立て方の練習、夕方の水洗いなどかいがいしく準備を進めてきた。

　今大会に出品する「ひむか２」は、２００７年鳥取大会１区（若雌）で優等３席を獲得した五ケ瀬町産の牛「奥日向」の血統で、美しい体上線とビロードのような滑らかで艶のある毛質が特徴。

　ともに全共へ進む３人より導入時期が２カ月ほど遅く、４月末ごろまでは線の細さに不安もあった。しかし、餌などを工夫することでようやく他の３頭に見劣りしない仕上がりになったという。

　全共経験者で６月に１００歳を迎えた祖父・輝一さんも期待を寄せており「全国の舞台で評価されれば、地域活性化や県内で畜産を営む人たちの経営安定にもつながる」と大志さん。優しいまなざしで虎視眈々（たんたん）と頂点を狙う――。