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災害時・物流支援DX会議が発足−延岡市

本紙掲載日:2023-07-25
3面
延岡市災害時物流支援DX会議の第1回会議(市役所災害対策本部室)

救援物資をより早く手元に

◆官民連携で仕組みづくりへ

 大規模災害でライフラインが寸断して食料品や日用品が入手困難となる課題の解決を目指す「延岡市災害時物流支援DX会議」が21日に発足し、市役所で第1回会議が開かれた。延岡をモデル地域に産学官連携で取り組む全国初の災害時物流システム構築事業で、同会議は被災者の手元までいかに救援物資を届けるかの「ラストワンマイル(最後の接点)」を担う。

 国内の日用品物流はICT(情報通信技術)の活用で極めて効率化され、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどは倉庫を持たなくても、必要分だけ受発注して商品を切らさない経営体系を確立。在庫を抱えないで済む半面、大規模災害時には買い込み客に対応しきれず、品切れとなる現象が全国で繰り返されている。

◇不便、我慢が前提の避難所の課題解消へ

 一方、災害避難所には避難者が必要品を持参するのがルールで、自治体からはわずかな備蓄食料や水程度しか配られない。こうした〃不便さ〃や〃我慢〃が前提になっているため避難しなかったり、避難をためらう人も多く、「逃げ遅れゼロのまち」を目標に掲げる延岡市にとっても大きな課題となっている。

◇すでに昨年度から調査事業

 そこで市は、慶応義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)研究所と大手の日用品メーカー、物流界、IT企業などが業界の垣根を越え構想している災害時物流の仕組みづくりに参加。南海トラフ地震や日向灘地震など多くの災害リスクを抱え地理的にも不利な延岡を先行地域として、昨年度からさまざまな調査事業が進められてきた。

 慶応大側が今年5月に市へ提出した最終報告書によると、避難生活を支えるおむつやミルク、石けん類、口腔(こうくう)ケア用品、生理用品など、ドラッグストアで取り扱うような物品は大手卸・物流網で市内拠点まで搬入できる見込み。飲料水や一定の食料品も地元業者で集められることが確認できているという。

 一方、避難所などから寄せられる多数の要請は市の窓口が一手に受け付け、ファクスで1件ずつ業者らとやり取りしながら受発注するなど、時間も労力も大きいのが現状。このため市は国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、受発注から配送までを一元管理し、関係者同士で情報共有できるシステムを導入することにしている。

◇避難所−卸業者−配送業者・直接つながり、より早く

 システム運用により、どこに、何が、どれだけ必要かが即時に共有でき、最終的には避難所−卸業者−配送業者などが直接的につながり、被災者へより早く必要品が届けられる連携態勢を目指すという。

 市はこれまでに、26社と災害時応援協定を結んでおり、このうち同会議には現在、生活物資の供給で12事業所、飲料水で4事業所、物資の配送で8事業所が参加。また、特に支援が必要となる福祉避難所15施設、システム構築の核となる慶応大、プラネット、インテック、AJS(旭化成情報システム)などがメンバーとなっている。

 第1回会議は非公開で行われ、市の担当者によると、主に地元事業所から災害規模の設定、情報収集から配送までの手続きや役割分担などについて質問が挙がったという。今後は11月にかけて会議や個別ヒアリングを重ね、年内に中間報告を取りまとめることにしている。

 今後も趣旨に賛同する事業者を加えながら、当面は災害規模を設けないで柔軟に可能性を協議。中間報告がまとまった後は災害時物資供給マニュアルの策定も計画することにしている。

 会議の立ち上げに際し、読谷山洋司市長は「避難所は水と食料だけでは十分ではなく、おむつやミルクなども大量に必要となる。『避難所にたどり着けば何とかなる』という信頼を築き、逃げ遅れゼロを目指したい」とあいさつ。

 地元事業者を代表し、平林食品の平林宏一社長は「あらゆる災害を想定して、市民の皆さまが本当にお困りの時に私たち事業者は何ができるのか話し合い、決まったものは全力で取り組みたい」と力を込めた。

 なお、災害時物流支援をめぐっては市が、地上の通信インフラが途絶しても衛星を介して避難所など市内20地点のエリア内で通信が可能な「平常時・災害時共通災害に強い地方創生ネットワーク構築事業」(1億9943万円)を2023年度一般会計補正予算案に計上し、市議会6月定例会に上程したが否決されている。

 読谷山市長は「国のデジタル田園都市国家構想交付金事業の支援(95%財政支援)決定を頂いたところで、何とか一日も早く構築することで、皆さま方がご参加いただいた成果を着実に生かされるようにしていかなければならない」と、近く臨時会を招集して再提案することとしている。

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