富島３度目の挑戦、終わる

本紙掲載日：2022-08-12

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第１０４回全国高校野球選手権大会

　グラウンドを後にする富島の選手たちに甲子園から温かい拍手が注がれる。バックネット裏で拍手する野球少年に「ありがとう」。声を掛けたのは、宮崎大会で活躍したが、出場機会少なく悔しい思いを残したはずの安藤。富島３度目の挑戦は終わった。

　試合は、わずかな差が積み重なっての完敗だった。

　「（相手打線が）振ってきて、多く投げされられた」と日柳。日髙の球数はかさんだが、五回までは０―１と想定内の展開で進んだ。

　だが、相手のしぶとい打撃と、小さなミスがボディーブローのように効いていった。

　最終回の攻撃。濵田監督は「逆転の富島。最後まで諦めず楽しく」。主将の高橋は「もう一回元気出して頑張ろう」。声を上げる。

　三塁側アルプスの手拍子に球場全体が応える。舞台は整ったが、相手の救援右腕に封じ込められた。

　日柳は「後半に球威が落ちてきたところで狙われた。強いチームだった」。坂本は「ずっとここで勝ちたいと思っていた場所。観客も多く歓声に驚いたが、とても楽しかった」。高橋は「本当に一人ひとりが役割を果たそうとしてくれた。みんな熱くて野球が好きで。このチームで良かった」。相手への称賛、聖地、仲間への思いを胸に、高校野球を終えた。

◆日向の夢を背負って日髙

　「甲子園１勝」。苦しいマウンドとなった富島のエース、日髙は「仲間が逆転してくれる」。日向の夢を背負って、最後までマウンドに立ち続けた。

　スタミナ十分の本格派。尻上がりに調子を上げるタイプで、全国区の相手は、好投手攻略のお手本のような攻め。ギアを上げるタイミングをつかませてくれなかった。

　球速表示だけを見ても、宮崎大会と比べると本調子ではないように見えたが「そこまで悪くなかった」と本人。「いつもと変わらず１人ずつ丁寧に、３人で抑えようという気持ち」。捕手を、野手を信じて、淡々と投げ込んだ。

　序盤から粘り強い相手打線に球数を稼がれ、浴びた安打１３本のうちおよそ半数は不運なもの。だが、マウンドに集まる仲間は、信頼できるエースに笑顔で声掛けを続けた。

　濵田監督は「この夏、試合を重ねるごとに成長し、きょうもぶれずに富島の野球を貫いてくれた。本当に成長した」。エースの立ち姿をたたえた。

　「大事な六回に塁に出して、流れが変わった」と、自らの四球に敗因を求めた本人。プロ野球の志望届については「出すつもりだが、きょう多く課題が見つかった」と足元を見つめて語った。

　夏を終え「コロナで野球ができない時もいろんな形で野球を考え、学べた。投手としての面白さもどんどん見つけられて、このみんなと野球ができてよかった」と総括した。