コロナリポート−第５波感染拡大

延岡共立病院その時（中）

◆期間中、妊婦３人を受け入れ−延岡病院と連携母子の未来、守り抜く

　今年８月１７日、新型コロナウイルスに感染していた千葉県柏市に住む妊娠８カ月の３０代女性が、入院先が見つからないまま自宅で出産した。新生児は心肺停止状態。市内の大学病院に搬送されたが、死亡が確認された。

　女性は１１日に感染が確認され、１４日夜からせきなどの中等症の症状が表れ始めた。市は１５、１６日に一般のコロナ患者として入院先を探したが、見つからず。県によると、計９カ所の医療機関に満床などを理由に断られていたという。

　このニュースが世間に報じられた時、延岡市山月町にある延岡共立病院（赤須晃治院長）の感染症病棟には、妊婦が入院していた。第５波期間中、計３人を受け入れた。

　同院に産科はないため、同病棟の医師と看護師は、市内の産科の医師から緊急事態になり得る症状を学んだ。胎児心拍計を借り、胎児と母親の健康状態を注意深く観察した。つわりのある妊婦には、本人の好みに合わせて果物やさっぱりしたジュースなどの食事を提供した。

　３人のうち、１人は肺炎の症状が悪化。県立延岡病院へ搬送されたが、帝王切開が行われ、胎児と母親の命は守られた。残る２人も無事に退院し、両院が連携して母子の未来を守り抜いた。

　同市中川原町の旧病院で、昨年の第２波から対応してきた看護部の山本いづみ師長は「患者さんだけでなく、もう一つの命も守ることができて安心している」と話す。

　　　　　　　　　○　　　　　　　　　　○

　同院は感染症病棟を４階に開設した。南側と北側の病棟とつなぐ通路をアクリル板で仕切り、南側全てを専用病棟にした。ナースステーションも新たに構えた。

　病棟の看護師は７人。このうち、６人は今回初めて感染症病棟に入った。山本師長は「こういう機会はなかなかない。次に備えて、経験者を増やす必要があった」と語る。

　看護師らは投薬や症状の確認のほか、うつぶせにして肺炎を和らげる腹臥位（ふくがい）療法なども現場で行った。３交代制で２４時間、情報共有も欠かさず対応した。

　第５波は「第２波を経験したので抵抗なく対処できた」と山本師長。「あの頃はコロナがどんな病気か分からなかった。隔離で家族に会えない職員もいた」。つらい思い出が頭をよぎる。

　それに比べ「今はだいぶ分かっている。正しい知識を身に付けて正しく恐れられたので、精神的な負担も減っていた」。その結果、医師と看護師７人で累計７１９人を無事に退院させた。