笑顔で劣勢はね返して

第１０３回全国高校野球選手権宮崎大会

◆中心に「鼓舞係」伊藤

　「諦めてねーよな」「てっぺん取るのは俺らやろ」。最後の攻撃を前に円陣を組んだ選手たちが声を張り上げる。「楽しんだ者勝ち」。劣勢を笑顔ではね返してきたチームの中心にいたのが伊藤だった。

　「鼓舞する係」を自認する。甲子園で準優勝した桜色のユニホームに憧れ入学した。チームは１年生大会で優勝。だが、２年時まで夏の結果を残せず、最後の秋も春も、劣勢を跳ね返せなかった。

　「得点時の盛り上がりが足りない」。夏を前に、実戦形式の練習を繰り返し、プレーは磨いてきた。その上で、あの夏のチームのような一体感を出したい。

　コロナ禍で、ハイタッチなどを自粛する時勢の中、ベンチの中で生還した選手を囲み、全員で両手を上に掲げる。自分たちだけの得点パフォーマンスを生み出した。

　最後の夏は、ミスをしても失点をしても。一つになれたチームの自信は揺るがない。みんな笑顔で、４試合を逆転で制した。

　決勝。秋の宮崎商戦で４安打しており「自信があった」。１安打１四球と打席でもチームを鼓舞したが、続かずに完封負けを喫した。

　「甲子園には行きたかったが、最後まで負けそうな雰囲気は出さずに戦えた。メンバー外の３年生のサポートにも感謝している。全員が他人任せでなく率先できるよう人間的な成長ができた」

　得点時のパフォーマンス。実は、プロ野球・阪神のマルテ選手が行うものとそっくり。「同じだけど、前から尼嵜がやっていたポーズ。マルテより尼嵜、阪神より延学が先です」。まねではない。その自信もある。