思い結実大将戦制す−上野

第４４回県中学校秋季体育大会−剣道

　「小さな町の大きな夢どうせやるなら日本一」

　大会前、チームで掲げたスローガンに、７人の部員は誰も疑うことをしなかった。それは大会中も同じ。「優勝しか見ていなかった。チームワークが良くみんなで励まし合ってきた」と田阪汐里主将。初優勝でチームはスローガンに近づく、確かな一歩を踏み出した。

　１年生５人で挑んだ昨年の秋季大会は３位。そのときから「どうせやるなら日本一」はチームのスローガンだったという。

　上野は全校生徒３４人と決して大きくない。前田浩司監督は強豪校との合同合宿や部活時間の延長など、厳しい課題を与えてきた。「チームワークがテーマ。同じ試練をみんなで乗り越えることを感じてほしかった」。その思いに選手たちも応え続けてきた。

　その成長は大会中も続いていた。前田監督が「励まし合う空気を自分たちでつくって、絶対に一本を取るんだという意志があった」と話すように、試合を重ねるごとにチームのまとまりが強くなった。

　その結実が決勝だった。１−１で勝敗の行方は大将戦へ。上野にとっては引き分けも許されず、勝ちしかなかった。大将の甲斐雪音はコテで先取するが、すぐにメンを奪われる。もう後がない。甲斐がふと仲間の姿を見ると、祈るように見詰めていた。「みんなの姿を見たら自信が出てきた」。鮮やかにメンを決めた。

　「気持ちで攻めて出した技だった」と前田監督も興奮。田阪主将も「気付けば自然に涙が出ていた」とみんなで喜びを分かち合った。

　スローガンをかなえる場は来年だ。「夏も優勝します」。全員が自信に満ちた目で答えた。