「北川歴史散歩」児玉剛誠さんが自費出版

町内１７集落−民俗文化を丹念に

　延岡市北川町俵野の西郷隆盛資料館で管理人を務める児玉剛誠さん（７８）はこのほど、北川町内１７集落に残る歴史、民俗、文化や信仰などを１３６ページにまとめた「北川歴史散歩」（Ａ４判、カラー）を自費出版した。

　西南戦争で西郷隆盛が宿陣した児玉熊四郎宅（現・西郷隆盛宿陣跡資料館）は児玉さんの生家。旧北川町役場に勤務していた頃から、北川に関する歴史、民俗について執筆、寄稿してきた。

　約４０年にわたって町内で聞いた話を書き留めており、そのメモを３千点にのぼる資料と照らし合わせて検証してまとめた。中学３年生の頃から欠かさず書いてきた日記も重要な資料として役立ったという。

　１０章で構成。１７地区に残る史跡、自然、記念碑、信仰について。さらに日向備長炭として京都や大阪方面で知られた北川の炭焼きの歴史。村芝居や葬儀、結婚など北川の民俗風習。西郷隆盛と西南戦争、ニニギノミコトの陵墓など−を紹介。それぞれに写真も載せた。

　写真は児玉さんが実際に各地区を巡って撮影。途中でカメラが壊れるハプニングもあったが、３カ月かけて４００枚以上の写真を撮ったという。

　西郷隆盛や西南戦争の章では、資料集めに一苦労。現存する希少な資料をコピーするため、他県まで足を運んだという。また、北川に残る庚申（こうしん）塔１７２体の種類などもまとめた。

　「現代に生きる人たちは、自然に対する畏敬の念が薄れていっているように感じる」と話す児玉さん。「コロナのような目に見えないものや自然との関わり方、共存のヒントは、昔の人たちの生活の中にこそあると思い、この本の制作を決めた」と振り返った。執筆を終え、今はとにかく「満足」と笑顔で話していた。

　２００部を印刷し、知人や取材に協力してもらった人、市の文化課や北川の図書館などに寄贈したという。