県北から５作品と２人が全国へ

本紙掲載日：2021-07-24

7面

ＮＨＫ杯全国高校放送コンテスト県予選

◆２９日に全国審査発表

　第６８回ＮＨＫ杯全国高校放送コンテスト県予選は６月１１、１２日、宮崎市の佐土原総合文化センターであった。

　延岡星雲放送部（日髙春乃部長、１１人）がラジオドキュメント部門と創作ラジオドラマ部門で１位になるなど３作品が全国大会に進出。聖心ウルスラ学園も、番組制作サークル（佐藤碧泉部長、１１人）がテレビドキュメント部門で１位、放送部（栁田さくら部長、８人）がラジオドキュメント部門で３位になるなど、２作品が全国に進んだ。

　個人も活躍。アナウンス部門で日向３年の大山真弓さんが頂点、朗読部門で延岡星雲３年の山本慧さんが２位で全国に進んだ。

　同コンテストは昨年、コロナ禍で中止となったため２年ぶりの開催。全国大会はデータ審査形式で行われ、今月２９日に最終順位が発表される。

　県北関係の県予選の結果は次の通り。

【総合】
③延岡星雲

【アナウンス部門】
①大山真弓（日向３）＝全国大会へ
④椎葉羽月（延岡３）松田侑希（延岡星雲３）

【朗読部門】
②山本慧（延岡星雲３）＝全国大会へ
④小林花代（日向１）栁田さくら（聖心ウルスラ３）黒木芽依（日向３）

【ラジオドキュメント部門】
①延岡星雲「君を笑わせるよ」③聖心ウルスラ学園「一人ぼっちのシスター」＝以上、全国大会へ
③聖心ウルスラ学園「太鼓の鉄人」

【テレビドキュメント部門】
①聖心ウルスラ学園「先生、それ多くないですか？」②延岡星雲「僕らのフォートレスト」＝以上、全国大会へ

【創作ラジオドラマ部門】
①延岡星雲「星の近くへ」＝全国大会へ

【創作テレビドラマ部門】
③延岡星雲「しん友」

■アナウンス部門１位－日向高校３年大山真弓さん
◇猛練習で勝ち取った頂点

　校内放送で使う自作原稿の内容やアナウンス技術などを審査する「アナウンス部門」で初の頂点。「名前が呼ばれた時は感極まってしまった」と喜んだ。

　「みんなが知らないようなことを」と意気込んだテーマ探しは難航。そんな中、同校で書道を教える久保奈月教諭が、昨年の県美術展で大賞を受賞したことを知った。謙遜する久保教諭に頼み込んでテーマとした。

　取材するうちに久保教諭が母親から書道を学んだこと、今ではライバル関係だと分かり、２人の熱い戦いに焦点を当てた原稿に仕上げた。

　中学生の時、放送委員会で活動したことをきっかけに入部。最初は「放送部に大会があることに驚いた」という。初めての大会は「周りと比べて自分のレベルの低さをしみじみと感じた」。同時に上位入賞者の明るい声の調子に「かっこいい、あの声に近づきたい」と憧れた。

　２年時から指導する地神大介顧問は「別人のよう」と成長を評価する。「歴代１、２位を争う猛練習の生徒。前日に駄目出ししたことが翌日には直っている」。昨秋の九州大会出場の経験も成長につながった。

　地神顧問に助言を受けながら書き直した原稿は１２本。読みを繰り返し練習した。音源での予選を勝ち抜き、迎えた本番。「明るく硬くならずに読むことを意識した」と大山さん。３年間の努力を実らせた。

　全国大会は提出した音源で審査されるため、結果を待つだけ。「培った精神力を生かし、将来は臨床検査技師になりたい」と笑顔で話した。

■ラジオドキュメント部門１位－「君を笑わせるよ」
延岡星雲高校放送部（制作者＝３年・松田侑希さん）
◇本田誠人さんの人柄を伝えたい

　コロナ禍で暗いニュースが目立つ中、新聞で明るい話題を見つけた。昨年１１月、延岡市出身の本田誠人（まこと）さんが仲間と延岡総合文化センターで開いた「本田笑劇場」。「コロナ禍でのすてきな取り組み」と、本田さんに取材を依頼した。

　取材を進めようとしていた矢先、誠人さんが「膵臓（すいぞう）がんのため死去」という事実をニュースで知った。大きなショックを受けた。「たとえコンクールに間に合わなくても、絶対に中途半端な気持ちでは出品しない」。吉田大二郎顧問と約束した。

　妻の泉さんや高校時代に漫才コンビを組んだ中尾諭介さん、演劇仲間の中野弥生さんら、誠人さんをよく知る人たちに取材した。話を聞けば聞くほど、誠人さんの人柄が伝わった。

　誠人さんの舞台上での声や入院中の誠人さんに家族が送ったメッセージなども挿入した。最後は、誠人さんが作り、子どもたちと一緒に歌った曲。作品の題名となっている「君を笑わせるよ」のフレーズで終えるよう工夫した。

　同部門には初挑戦。また、３年生の松田さんにとって高校最後の作品でもあり、責任感を持って挑んだだけに、コンクールの講評で褒められた時には大号泣した。「作品としては満足していた。それが誰かに伝わったって知ってうれしかった」

　思いを込めて制作した作品は全国大会に進んだ。取材を通して知った誠人さんの「まっすぐな人柄」が多くの人に伝わることを願っている。

■ラジオドキュメント部門３位－「一人ぼっちのシスター」
聖心ウルスラ学園放送部（制作者＝ともに３年・栁田さくらさん、宮田翔平さん）
◇満洲からの引き揚げテーマに制作

　聖心ウルスラ学園の創立母体「聖心（みこころ）のウルスラ宣教女修道会」のシスター・石山拓子さんが主人公。栁田さんらが同学園聡明中に在籍していた時、戦争についての講話があり、石山さんが満洲から引き揚げてきた体験を聞いた。

　作品中、石山さんの声で集団自決の場面や引き揚げの途中で母親を亡くした時の悲しみなどが語られている。実際に聞いた時に衝撃を受けたことから挿入したという。

　「戦後７５年がたった今、満州のことを知らない人に事実を知ってもらうことが大事。風化させてはいけない」と、高校１年時から先輩たちと共に取材を始めた。長い時間をかけ、ようやくコンテスト前に作品が完成。列車の効果音を冒頭に流し、世界観に引き込む工夫をした。

　最後は石山さんに思いを聞き、「この悲劇が二度と起きないことを祈って、シスター石山はこれからも祈り続けます」の言葉で締めくくった。「二度と起こさない」「事実を風化させてはいけない」―。次世代を担う、自分たちの決意も込めた。

■テレビドキュメント部門１位－「先生、それ多くないですか？」
聖心ウルスラ学園番組制作サークル（制作者＝佐藤碧泉、藤田愛稀、權藤光、加賀城和花、渡辺愛理、中田潤奈、椎村綾、清水凜さん）

　メンバーは、入学したばかりの１年生が主体。締め切りまで限られた時間の中、田中胤巳顧問が昨年度１年間に出した学級通信が１０２枚と、他の学級より多いことに着目し、題材に選んだ。

　取材が校内でできる分、多くの人に話を聞いた。他の教職員が学級通信を出す頻度や田中顧問の学級通信に対する評価、田中顧問が担当する学級の生徒にも話を聞いた。

　すべてが初めての経験。最初は、質問の仕方が分からず相手を困らせてしまうこともあったが、取材を重ねるうち「どう聞けば相手に伝わるかが分かるようになってきた」。

　「そもそも入賞できるとは思っていなかった」とメンバー。結果発表で１位と知り「気が動転した」と笑う。初出場での結果が大きな自信にもなった。「次の大会も入賞したい」と意気込んだ。

■ラジオドキュメント部門３位－「太鼓の鉄人」
聖心ウルスラ学園番組制作サークル（制作者＝同）
◇コロナ禍の和太鼓グループを取材

　取材対象に選んだのは、「コロナ禍で活動継続の危機」として、運営資金をクラウドファンディングで募っていた日向市の和太鼓グループ「日向十五夜太鼓」。インターネットの記事で知った。

　取材を依頼し、実際に会って話を聞いた。楽しい内容ではないが「明るく答えてくださって、聞きづらさはなかった」。数多くの経験から、高校生の自分たちに、将来に向けての助言ももらい、印象に残ったという。

　上位大会に出品できるのは１部門１校１作品と規定されているため、全国大会出場はかなわなかったが「入賞できて驚いた」。こちらも初出場での入賞に満足そうだった。

■創作ラジオドラマ部門１位－「星の近くへ」
延岡星雲高校放送部（制作者＝３年・山本慧さん）
◇効果音の使い方を工夫

　幼い頃に父親を亡くし、母子家庭で育った高校生が主人公。経済的な理由で希望する進路をあきらめようかと迷っていたとき、父親が使っていた携帯電話を見つける。その中に残っていた一つだけの連絡先に電話をかけ、話すうちに、「大学で星について、宇宙について学びたい」という思いを語り、夢に向けて歩み始める―というあらすじ。

　自分の小さい頃の夢が宇宙飛行士だったことをヒントに、「頭の中で想像しながら制作した」という。

　最も工夫したのは効果音。足音は実際に歩いて取り、家にあったドライフラワーをつぶして、草がすれる音を出すなど工夫した。さまざまな効果音が同校の強みであることもあり、「伝統を崩しちゃいけないと思った」。８人ほどに出演してもらい、声に違いを付ける工夫もした。

　脚本を読んで部外から出演してくれた友人も、１位の結果を喜んでくれたといい、「うれしかった」と満足そう。

■テレビドキュメント部門２位－「僕らのフォートレスト」
延岡星雲高校放送部（制作者＝３年・日髙春乃さん、２年・加藤博司さん）
◇新しい形で森林を守る人たちを取材

　新聞記事で読んだ、延岡市の高平山にあるサバイバルゲーム（サバゲー）場「フォートレスト」が題材。日髙さんは「森林を守る取り組みは、私にとって崩さないこと、木を切らないことだと思っていた。（ゲーム場にするという発想が）私の考えを覆し、刺激的だった」と、取り上げた理由を話す。

　１月ごろから数回にわたって通った。最初は、自転車ではとても上れない急な坂道を上っていて、車で通りかかった関係者に〃救出〃してもらったという。

　「サバゲーを知らない人も多い。流れを知る必要がある」と、部員らに参加してもらい、体験型の取材をした。「（同場を利用していたのは）すてきな人ばかり」。温かく出迎え、インタビューにも答えてくれた。

　「森林の新しい守り方を取り上げたい」と取材を進めるうちに、同場のゲームマスター小野寿雄さんらスタッフや利用者の温かさに触れ、「人間のいいところがたくさん見えた」という。

　コンテストでは高校生活との結びつきの強さも審査のポイントとされており、「結びつきが甘いかなと心配していた」が見事２位。「お世話になった人たちも大喜びしてくれて、うれしかった」と話す。

■朗読部門２位－延岡星雲高校３年山本慧さん
◇登場人物２人を演じ分けた

　指定作品５編の中から１編を選び、自分の表現したい部分を抽出して朗読する「朗読部門」で２位。「ほっとした。努力が実を結んでうれしい」と喜んだ。

　選んだ作品は荻原浩作「時のない時計」。「作品を読んでいて、主人公の心が一番動く瞬間を切り抜くようにしている」と山本さん。また、「せりふが多く出てくる部分が得意で、演じ分けるのが好き」と、２人の登場人物が掛け合う部分を選んだ。

　創作ラジオドラマ部門に出す作品作りと並行して取り組まなければならない難しさがある中での好成績。「持ち味が出せた」と笑顔を見せた。