栗田彰子先生をしのぶ

本紙掲載日：2021-06-30

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正門横の慰霊碑前で手を合わせた

栗田さんの肖像画や折り鶴が供えられた祭壇に献花する生徒会役員

全校生徒が参列し、平和への決意を新たにした

延岡大空襲延岡中で慰霊祭

◆前身の国民学校消火作業中、犠牲に

　延岡大空襲から７６年がたった２９日、延岡市浜砂の延岡中学校（土井智喜校長、２９６人）は、前身の安賀多国民学校教諭で、消火活動中、頭部に焼夷（しょうい）弾の直撃を受けて２５歳で殉職した栗田彰子さんの慰霊祭を執り行った。平和への決意を新たにし、後世に伝えることを誓った。

　慰霊祭には全校生徒、教職員の他、栗田さんのいとこの長男・白石智さん（６４）＝宮崎市＝が参列した。

　同校の卒業生でもある土井校長はあいさつで、延岡大空襲における被害や栗田さんのエピソードを紹介。日本では７６年間、平和が保たれている一方で、世界各地でたくさんの人命が戦争や紛争で奪われていることに触れ、「７６年前に延岡や延岡中学校で起きた悲劇、犠牲となった栗田先生や全ての方々のあるはずだったその後の人生について思いをはせ、命や平和の尊さについて、深く考える機会にしてください」と呼び掛けた。

　その後、参列者全員が黙とう。生徒会副会長の富田涼太さん（１４）は、戦争について学び、考えたことについて、「戦争は人間を人間ではないものにしてしまう。戦争を繰り返してはいけない。戦争は人間が起こすもの。ならば戦争をやめるのも人間。そのために私たちは学び続けるのです」「栗田彰子先生をしのび平和への誓いを新たにします。私たちは後輩たちにも語り継いで、追悼を続けていけるよう努力してまいります」と、力強く誓った。

　白石さんは、慰霊祭を続ける同校に感謝し、「今後もいろんな困難があると思うが、思いやりを持って今後の生活を送ってほしい」と話した。

　当時の塩月儀市校長が作詞、同僚だった中須正三郎さんが作曲した「栗田彰子先生を弔う歌」が流れる中、白石さんや土井校長、生徒会役員が菊の花を献花。この後、献花したメンバーは同校正門横にある慰霊碑前に移動し、手を合わせた。

　栗田さんはカナダのバンクーバー生まれ。１９３７年にバンクーバーの高校を卒業後、日本語学校の教諭になる夢を実現させるため来日した。延岡市桜小路にある母親の実家に身を寄せ、延岡高等女学校専攻科、宮崎女子師範学校を卒業。１９４１年４月、安賀多国民学校の訓導（現在の教諭）となり、４年３カ月にわたり、同校の教育に尽力した。優しい人柄で魅了し、多くの子どもたちに慕われたという。

　同校では毎年６月、戦争と平和について学ぶのが恒例。今年も総合的な学習の時間に３年生が延岡大空襲、２年生が戦争全般、１年生は栗田さんについて学んだという。

　生徒会副会長として献花した髙橋紬さん（１４）は、「平和がありがたいことだと感じた。（慰霊祭や学習は）延岡中独自だと思う。後輩にしっかりと伝えていきたい」と話した。