私の一冊（３）みやざき保険専務・三輪洋巳さん

「深夜特急」（沢木耕太郎著、新潮文庫刊）

◆６巻まで一気読み。視野広がった

−−本との出会いを教えてください。

この職に就き、２００７年から１年間研修し、０８年にみやざき保険に戻ってきました。
戻ってきた際、旅が好きだった先代の社長が「どこか旅に行ってこい」と言ってくださった。この仕事に就く前は京都に住んでいて格闘技をしていたので、ムエタイを習いたいと思い、単身でタイに行きました。これが初の海外です。
言葉の壁などに苦労しましたが何もかも新鮮でした。その旅というか、旅行を終えて帰って来た時に「深夜特急」を先代社長に勧められました。すぐに手にし、一気に読みました。

−−どのような本ですか。

著者の沢木耕太郎さんが、１年以上かけて香港からロンドンまで旅する話です。乗り合いバスを使って陸続きに、当初は半年で到着する計画だったのですが、行く先々でいろんな出会いがあり、長居してしまう。時には、「なぜこんなことしているんだろう」と悩んだり、寂しさにさいなまれたりして、結局１年以上費やすんです。
李賀の詩集を持って旅をしているんですが、旅の終盤で、李賀の漢詩から引用した「飛光よ、飛光よ、汝（なんじ）に一杯の酒をすすめん」というフレーズが出てくる場面などが印象的ですね。
最後にロンドンで電報を打つのですが、そのフレーズも良い。感動や寂しさ、感情、高揚感がすごく伝わる。自分が実際に旅をしていて、その場にいるかのよう。描写がとても細かくて、感情がリアルに伝わってくるんです。

−−普段から本を読まれるのですか。

お客さまと接してお話しする機会が多いので、知識、幅を広げようと読み始めました。
その中でも一番〃はまった〃のが、この「深夜特急」でした。１〜６巻まで一気読み。暇があったらとにかく読みました。とても面白かったです。それまでは、タイには行ったものの、海外や旅に関心があったというわけではなかったんです。しかし、この本を読んで変わりました。

−−実際にどちらかに行かれたのですか。

上海、バリ、ハワイなど。タイにも再び行きました。やっぱり海外は、日本とは空気感が違いますから刺激があります。私の視野を広げてくれたのは、間違いなくこの本ですね。
他に本は読んでいますか。
月に１冊程度、最近ではビジネス書などを読みます。例えば「大人の語彙力ノート」（齋藤孝著、ＳＢクリエイティブ刊）。お客さまと話す機会が多いので、言葉遣いをきれいに、丁寧にしたいなと思って手にしました。

−−どんな時に本を読もうと思うのでしょうか。

勉強したい時ですね。インターネットはピンポイント。例えば、言葉遣いについて知りたい場合、ネットで「教えてください丁寧に」などと検索すれば、その答えは出てくる。でも、他の事は出てきません。
一方、「大人の語彙力ノート」を適当に開いてみると、「『主導権を取る』は『イニシアチブを取る』にも言い換えられる」などと書いてあります。本は、自分が求めていた以上の言葉や知識を与えてくれます。

（日向市上町、４１歳）