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カエル養殖に取り組む橘木良祐さん(椎葉村)

本紙掲載日:2021-06-04
7面

誰もがおなかいっぱいになる世の中に−

◆働く意味を探して見つけた夢

 「全ての人が、栄養あるものを腹いっぱい食べられる世の中にしたい」。夢の実現に向け、昨年からカエルの養殖に取り組む若者が椎葉村にいる。宮崎市出身の橘木良祐(たちばなき・りょうすけ)さん(31)だ。6月6日のカエルの日を前に〃カエルくん〃の愛称で親しまれる橘木さんを取材した。

 橘木さんは、カエルのかぶり物を身に着けて現れた。理由を聞くと「覚えてもらうため。寝るとき以外は着けている」。大型ショッピングモールなど、村外の商業施設に行った時でも「外さない」と徹底している。

 カエルは、社員宅の空き部屋で育てている。三つの衣装ケースの中で、オタマジャクシ約300匹が泳いでいた。成体は約30匹。アマガエルやヒキガエルなど大小さまざまな5種が種別に分けられていた。

 移住したのは昨年7月。同村でチョウザメを養殖する宮崎キャビア社専務の鈴木宏明さん(33)とSNS(インターネット交流サイト)で知り合ったことが転機だった。同社で働きながら養殖のノウハウを学び、カエルの飼育を始めた。

 最初は手探りだったが、今年は「ふ化から産卵までの1サイクルを回し、どの種類がおいしいか調べたい」と抱負を語る。全ての人が、栄養あるものを腹いっぱい食べられる世の中に−の夢に向かって、一歩ずつ進もうとしている。

          ◇          ◇

 海外放浪とホームレスの経験が、夢を抱くきっかけになった。

 大宮高校から九州工業大へ進学。4年生になっても、就職活動はしなかった。「文句を言いながら仕事する大人を見てきた。働くって何だろう?」。そう思っていた。卒業後、その意味を探し見識を広めるため、東南アジアなどを巡った。

 タイに滞在中、カエル料理に出会った。幼少期から大の生き物好き。カタツムリや鈴虫など多くを育てたが、食べるのは初めてだった。「こんなにおいしいとは思わなかった」。全く異なる食文化に、衝撃を受けた。

 約4カ月放浪し、帰国。働く意味は依然として見いだせなかったが、生活のため、知人が経営する大分県の焼き鳥店に住み込みで働いた。だが半年後、経営難で職も住む場所も失った。

 家を借りるお金はなく、公園に寝泊まりした。住み込みのアルバイトが見つかるまでの約1カ月は、1日1食でしのいだ。「掃除するから食べ物分けてくれない?」。コワーキングスペースの利用者に、そう頼んだ日もある。

 ホームレス生活を脱出すると、同スペースに通った。「楽しそうに仕事する人ばかりだった。働く意味のヒントがあると思った」。話を聞いて回り「強烈な感情を抱いた体験が、その人たちの仕事の根底にある」という共通点に気付いた。

 「自分にとっての強烈な体験ってなんだろう?」。自問自答しながらノートに人生の曲線図を書き、約30年間を振り返った。

 大の生き物好き。特にカエルと縁が深いことに思い至った。大学では、ロボットの移動の衝撃を和らげる研究に打ち込んだ。その際に活用したのが、高い所から着地してもけがをしないカエルだった。海外で食べた料理の味も忘れられなかった。

 空腹にもだえた約1カ月も鮮明に覚えている。「あんな経験は誰にもしてほしくない」。今の夢が自然と浮かんだ。実現の手段として、鶏のささみと同等のたんぱく質を有しながらも、脂質が少ないカエルを活用することを決意。それを仕事にする覚悟も決めた。

          ◇          ◇

 椎葉村に移住し、飼育を始めてからは、飲食店を経営する知人らの協力を得て、主に県外でカエル料理を提供するイベントも開いている。

 これまで販売したのは、カエルラーメンやケロ南蛮、フロッグアンドチップスなど。まだ自分が育てたカエルではないが、新たな食文化を構築する活動に励んでいる。

 地元では〃カエルくん〃の名が広まった。子どもたちから「かぶり物貸して」と頼まれることもある。ある時、1着しかないかぶり物を渡すと臭いを気にされた。「その後、新たに5着買いそろえた」と笑う。

 カエルと接するうちに知識が増えた。例えば、前足の指の数。「3本と思っている人が多いが、実際は4本」。それを分かってもらうため、写真には、指を4本立てた「カエルポーズ」で写るようにしている。

 座右の銘は「井の中のカワズ大海を知らず。されど、空の深さを知る」。許可の問題などが絡み、販売までの道程は楽ではない。新たな食文化を浸透させるのも、一筋縄ではいかない。だが、この言葉を胸に、カエル養殖の道を究めるつもりだ。


◆6日、宮崎市でイベント

 6月6日は「カエルの日」。カエル好きでつくる「かえる友の会」の会員が、鳴き声のケロ(6)ケロ(6)から1998年に制定した。

 橘木さんは同日午後6時30分から、宮崎市橘通東の若草hutte&co―baMIYAZAKIで、カエルの魅力を伝えるイベント「かえるコミュニケーション」を行う。

 カエルに関する雑学を教える他、食べ比べやバーベキューも予定している。参加者が持参するものは「参加費3500円と好奇心」。

 今回は既に定員に達したため受け付けを終了したが、今後も開催する予定という(日時未定)。


◆まるで鶏のささみ−記者が味見

 橘木さんが、大切に育てたアカガエルをさばき、料理してくれた。「アカガエルは、昔から食べられていたそうです」と橘木さん。日本最古のカレーレシピに、この名前が入っているという。

 頭部を切り落とすと、皮がタイツのようにはげた。内臓を取り出して水で洗い、いよいよ調理。ニンニクで香りを付け、シンプルに塩こしょうで味付けしてくれた。

 「ささみに似ています。ただ、皮膚から水を吸収している分、少し水分量が多いです」。橘木さんの言葉通りだった。「鶏のささみです」と言われて出されても、判別できないほど同じに思えた。

 骨の硬さにも驚いた。橘木さんは「奥歯が欠けた。食べ物が詰まってしょうがない。早く歯医者に行かなきゃ」と笑う。〃カエルくん〃がカエルを…。これも共食いと呼ぶのだろうか。

 味は全く問題ないと感じた。抵抗感のある人は多いだろうが、環境問題と栄養価、人口増による食糧問題の観点から、現在は「無印良品」など昆虫食を商品化する企業も増えている。

 昆虫が食卓に並べば、カエルへの抵抗も減るのでは。そう思いながら小さな肉をかみしめた。カエルくん、カエルさん。ありがとうございました。そして、ごちそうさまでした。

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