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帚木蓬生さんが小説「沙林」出版

本紙掲載日:2021-05-11
6面
延岡市出身の井上尚英さん
帚木蓬生さん著「沙林〜偽りの王国」。570ページの大作

主人公のモデルは延岡出身、井上尚英さん

 延岡市出身の医師、井上尚英さん(82)=北九州市=をモデルにした帚木蓬生=(ははきぎ・ほうせい)さん著「沙林(さりん)〜偽りの王国」がこのほど出版された。井上さんは、松本サリン事件や東京・地下鉄サリン事件などオウム真理教が引き起こした事件の被害者の症状分析などを行い、捜査や裁判に関わった。本の主人公「沢井直尚」が事件にどう向き合い、解明に導いたかは、井上さんへの聞き取りや論文、裁判記録などに基づいて書かれた。世界を震え上がらせた大事件の貴重な記録集ともいえる。新潮社刊、2310円(税込み)。

 井上さんは1939年に福岡県で生まれ、すぐ延岡に転居。父親は旭化成ベンベルグ工場の病院長。恒富小、延岡中、恒富高(現・延岡高)から九州大医学部に進学。64年卒業。カナダ・モントリオール臨床研究所研究員などを経て、産業医科大教授から九州大医学部教授。2003年に九州大を定年退官。九州大名誉教授。神経内科医で中毒学の第一人者。

 「沙林」は、井上さんが九州大医学部教授だった1994年6月に長野県松本市で発生した毒ガス事件から始まる。

 事件直後に新聞社から問い合わせがあり、さまざまな可能性を調べた上で「原因は神経剤として化学兵器に使用されたサリンの可能性が大きい」と確信し伝えた。

 しかし、第一通報者の会社員が除草剤を作ろうとして毒ガスが発生したとされ、井上さんが「会社員は犯人ではない。犯人は別のどこかにいる」と断言したが信じてもらえなかった。

 事件発生から6日後、長野県警は「サリンが検出された」と発表。井上さんの推測は正しかったことが証明された。

 実は事件の直前、井上さんは「サリン〜毒性と治療」と題した論文を福岡の医学雑誌に投稿。検査や病理、診断、治療について詳しく述べていた。さらに、事件の翌月には、欧米の文献も引用して補強した「サリンによる中毒の臨床」を書き上げ、9月に医学専門誌に掲載された。

 その翌年の95年3月20日朝、東京の複数の地下鉄で毒ガス発生。ニュースで知った井上さんは「サリンだ」と判断し、すぐに二つの論文を日本医師会にファクスする。

 当時、被害者の治療に当たった聖路加国際病院の医師によると、院内が「いったい何を参考にして診断、治療を進めればいいのか」となった時、井上さんの論文が大量にコピーされ、院内を駆け巡ったという。

 一刻を争う救急治療に正確な治療情報を伝え、現場の医師や看護師に感謝された。

 「沙林」は、警視庁の依頼で被害者の症状や現場検証の結果を分析し、提出した井上さんの意見書も紹介。併せて、オウム真理教の化学者や医師ら事件に関わった信者の経歴や身上が実名で詳しく書かれている。

 教団が生成した化学兵器はサリンの他にホスゲン、イペリット、VX。生物兵器は炭疽(たんそ)菌を培養していた。こうした実態が明らかになるたび井上さんは警察の捜査に協力。裁判の検察側証人として出廷した。裁判での井上さんと弁護士のやり取りも細かく記されている。

 著者の帚木さんは東京大学文学部を卒業後、TBSで番組制作に関わったが2年で退社。九州大学医学部に入り精神科医になった。福岡県で精神科のクリニックを開いている。井上さんとは福岡の医師仲間。

 2015年には和歌山カレー事件を題材に、やはり事件の鑑定に関わった井上さんをモデルに「悲素(ひそ)」を出した。

 「悲素」も「沙林」も、優れた神経内科医で化学物質中毒症研究の権威である主人公が事件の真相解明に全力で取り組む姿を軸に、犯罪の全体像を明らかにする。

 帚木さんは「小説として構成したフィクション」としているが、地道な研究を続け、臨床経験豊かな医師で科学者の主人公は井上さんそのもの。帚木さんの2冊の著書により歴史に刻まれた。

【プロフィル】◆帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)
1993年「三たびの海峡」で吉川英治文学新人賞、95年「閉鎖病棟」で山本周五郎賞、97年「逃亡」で柴田錬三郎賞、2010年「水神」で新田次郎文学賞、12年「蠅の帝国」「蛍の航跡」の〃軍医たちの黙示録〃2部作で日本医療小説大賞など受賞。

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