大武町に美容院をオープン−延岡

福祉美容師／重黒木美穂子さん

◆あなたのお困りに寄り添います−

　延岡市大武町の福祉美容師、重黒木美穂子さん（４１）が１月５日、障害児者らに配慮した美容室「ｎｉｃｏｔｔｏ（にこっと）」を同町にオープンさせた。モットーは「あなたのお困りに寄り添います」。開店から１カ月が過ぎ、「軌道に乗れば、障害を持つ方を雇用したい」と夢を語っている。

　重黒木さんは、知的障害の長男（１０）と２万人に１人の割合という難病を持って生まれた長女（４）の母親。息子、娘が幼い頃は、市内の児童発達センターや宮崎市の宮崎大付属病院に通った。

　そこで同じ境遇の家族に出会った。わが子が発達障害でじっとできないため「散髪に行けない」「周りの目が気になる」といった多くの悩みを親から聞いた。美容師として「自分にできることをしてあげたい」という思いが、次第に芽生えた。

　知り合った子どもとその家族を誘い、勤めていた美容院で髪を切った。しかし「難しかった。安心させてあげられなかった」。音や置物などに過敏に反応したり、大声を出したりするわが子の行動を謝る母親もいた。

　「自分の子どもも、いろんな人に育ててもらい、助けてもらったから」と恩返しの方法を模索する中、福祉美容師の講習が開かれることを知った。迷わず受講し「困りごとに寄り添える店をやってみたい」と決意を固めた。

　勤め先からの後押しもあり、開業の準備に取り掛かった。延岡市内の福祉事業所や知り合いにアンケートを配り、それぞれの要望を聞いた。約３００枚を回収すると、「店で非日常を体験させてあげたい」という願いが多く寄せられていた。

　この結果とこれまでの経験を生かし、新店舗は内装や配置にこだわった。店内には、必要最低限の道具や壊れてもいい物しか置いていない。動かなくても全サービスが受けられるような椅子やシャンプー台にした。

　入り口にはスロープを整備。娘は引き戸が開けられないため、ドアはスライド式を採用した。車椅子のままでもカットできるよう、鏡との空間を広く設けた。病院を連想させる白色は避け、青色の壁紙を貼った。

　モットーは「あなたのお困りに寄り添います」。「笑顔になってほしい」と願いを込めた店名は、長男が決めた。「娘の名前も考えてくれた。候補を３案渡したら、選んでくれた」と言う。

　近い目標は「寝たきりの方の髪をカットするスキルを身に付けること」と重黒木さん。

　営業日は火−木曜日と土曜日。時間は午前９時〜午後６時。子育てもあるため、日曜日は「要相談」。月・金曜日は訪問サービスを行う。時間は午前１０時〜午後５時。