性の多様性を尊重することが大事

九保大で人権啓発推進セミナー

◆変わらなければならないのは、当事者でなく周りの環境

　コロナ禍でも人権について考える機会を提供したいと、九州保健福祉大学（兒玉修学長）は１１月２８日、延岡市吉野町の同大で、ＬＧＢＴＱと人権について理解を深める人権啓発推進セミナーを開いた。県人権啓発推進協議会からの委託事業。「ＬＧＢＴＱの当事者の行動を変えることよりも、周りの環境づくりが重要だ」と強調した。

　学生と一般約１６０人を対象に、北九州市立大学地域創生学群の寺田千栄子准教授と広島修道大学非常勤講師の眞野豊さんが、２部構成で講演した。

　第１部は、寺田准教授が「学校におけるＬＧＢＴＱの子どもの現状と支援」と題して話した。

　寺田准教授は、１９８９年に国連総会で採択された子どもの権利条約には生きる権利や守られる権利などが書かれているが、実際は学校生活の中で性自認を暴露されるなど、人権侵害されていると説明した。

　学校（社会）には、性別を男女の二つに区別する男女二元論や異性との恋愛を当たり前とする異性愛主義などが存在し、「ＬＧＢＴＱの子どもはこうした考えが社会にあることで自己非難し、自己破壊行為などをしてしまう」と訴えた。

　今後の学校の課題として、相談しやすい環境づくりや教職員間での意識統一、本人や保護者に寄り添った支援に早期に取り組む必要があることを強調した。

　第２部では、眞野さんが「私たちのセクシュアリティと人権」と題して話した。

　眞野さんは、社会の中にある男らしさや女らしさなどのジェンダー規範や異性愛規範を当たり前と思ってしまうことで、差別や暴力につながると説明した。

　実際に大学生が同性愛者であることを友人に暴露され、自殺に追い込まれた事件を紹介。原因として「周囲の学生や教職員が性は人権だということを今まで学ばなかった」などと推測。これに対し、性に関する教育が必要と訴えた。

　また、文部科学省が２０１５年に出した性同一性障害の児童生徒に対する学校の支援の事例を紹介。例えば、自認する性別の制服や体操服の着用を認める、職員トイレや多目的トイレ等の利用を認める、上半身が隠れる水着の着用を認めるなどがある。

　しかし眞野さんは、これらは当事者本人が行動を変えなければいけないということだと説明。これよりもむしろ、周りの大人が性への認識を変えて、授業内でも児童生徒を啓発することが重要と強調し、性の多様性が尊重される環境を目指すよう呼び掛けた。

　ＬＧＢＴＱとはＬは女性の同性愛者「レズビアン」、Ｇは男性の同性愛者「ゲイ」、Ｂは両性愛者「バイセクシャル」、Ｔは体と心の性が一致しない「トランスジェンダー」、Ｑは性が決まっていない「クエスチョニング」を意味している。