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「生きる権利、幸せ奪った」

本紙掲載日:2018-08-28
3面
土呂久公害の悲惨さを訴える齋藤正健さん

土呂久公害−ヒ素中毒の実態生々しく

◆告発者の元岩戸小教諭講演−県立図書館

 高千穂町の土呂久地区住民の亜ヒ酸精製が原因の健康被害を告発した元小学校教師の齋藤正健さん(75)=国富町=の講演会が26日、県立図書館であった。被害住民の肉声などを紹介しながら、慢性ヒ素中毒症の実態を生々しく伝え、「土呂久公害は人間としての生きる権利、幸せを全て奪い取ってしまった」と指摘した。

 県が昨年度から取り組む環境教育推進事業の一環。旧土呂久鉱山の過去の操業に伴う健康被害について、歴史の風化を防ぎ、その教訓を次世代に継承するのが目的。国内第4の公害病指定のきっかけをつくった齋藤さんの話に、県内外の105人が聞き入った。

 齋藤さんは大学卒業後の昭和41年、岩戸小に赴任し、体調不良を訴える土呂久地区児童と出会う。調べると、想像以上に深刻な被害事態に驚かされ、「命を懸けてやろう」と決意した。同46年の県教育研究集会で公害問題を提起した。

 この日は健康調査の過程で自らが録音したテープを持ち込み、10年間で家族11人が亡くなったという男性が「それじゃから毎年葬式」と話し、45年間もぜんそくで苦しみ、入退院を繰り返す女性が「死ぬまで治りませんですわ」とつぶやく様子などを紹介し、被害の悲惨さを訴えた。

 齋藤さんは61歳で亡くなった女性が「一度生れ変りて来る時は汚染なき地に生をうけたし(原文のまま)」と詠んだ短歌を披露し、「土呂久公害は、地区に住む家族を悲劇のどん底に突き落とした。同じ人間が、豊かな自然も尊い人間の命さえも奪ってしまった」と振り返った。

 一方で、「行政や支援者の努力のおかげで、土呂久には豊かな自然が戻っている」とし、「住民は自信を持って未来を切り開いてほしい。皆でいたわりのある社会をつくり、安全で美しい環境を未来に残していこう」と呼び掛けた。

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