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ワクチン、早めの接種を

本紙掲載日:2023-04-22
8面
佐藤圭創医師作成

新型コロナ週刊トピック

◆副反応が出にくいノババックス

 新型コロナウイルスの感染状況は県内を含め全国的に安定しています。1人から何人に感染しているかの指標となる実効再生産数は19日現在、34都道府県で「1」を超えて感染者数の増加傾向を示していますが、しばらくは横ばい状態が続くと見込まれます。

 一方、5月8日から2023年度(春)の新型コロナワクチン接種が開始するのに伴い、各自治体は22年度までの接種券が手元にある希望者に早めの接種を呼び掛けていますが、若者を中心に副反応が出るのを嫌がって接種しないケースも多いとされます。

 そうした人に向け、県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師は改めて、副反応が出にくいと期待される組み替えタンパクワクチン(武田・ノババックス社ワクチン)の接種を提案しています。

◇延岡市の宿泊療養施設は廃止へ

 県内では18日現在、医療機関に入院している感染者が8人、宿泊療養施設の入所は3人、専用ベッドの占有率(使用率)は2・0%。うち延岡市内は入院0人、宿泊療養者1人、ベッド占有率0%と、さらに安定しています。

 こうした状況を踏まえ、県は延岡市の宿泊療養施設を近く廃止し、宮崎市内の施設に集約することとしています。新型コロナの感染症法上の位置付けが現在の「2類相当」からインフルエンザなどと同じ「5類」へ移行する5月8日からは、幅広い医療機関で新型コロナ患者を受け入れることになるため宿泊療養施設自体の運用も終了する方針です。

 ただ、佐藤医師は宿泊療養施設を廃止後に、「県外や海外からの来県者が感染した場合の一時的な受け皿(隔離)をどうするかを考えておく必要があるだろう」と話しています。

◇XBB系統倍増も限定的

 世界的に感染の主流となっているオミクロン株亜種のXBB系統ウイルスは県内で今週、新たに11例確認されて3週連続で倍増し、ゲノム解析した全検体の42%を占めました。

 ですが、佐藤医師によると、解析対象をXBB系統への感染やその濃厚接触が疑われる陽性者などに絞っているため必然的に割合が高まるといい、現在はそれほど心配される状況にはないそうです。

◇若い世代の接種率向上が課題

 宮崎県の新型コロナワクチン接種率(3回目)は67・2%で全国平均の68・6%を下回っており、県内26市町村のうち門川町は最も低い62・7%、次いで日向市が63・9%、延岡市も下から5番目の65・2%という状況です。

 県内の年代別接種率(3回目)は60代以上が80%を超え、50代も76・1%ですが、40代は62・9%、30代52・1%、20代51・9%、12〜19歳は46・3%と世代が下がるにつれ伸び悩んでいます。なお、5〜11歳は8・9%です。

 若者は感染しても自覚症状がなかったり軽い場合が多い半面、知らない間に体内でウイルスが増殖し、周囲に感染を広げる「スーパースプレッダー」になりやすいことが分かっています。

 これから流行の主流になるとみられるXBB系統は全国で爆発的に拡大したBA・5よりも感染力が強く、各医師会などは重症化リスクの高い高齢者などを守るためにも若い世代のワクチン接種率をいかに上げるかが課題だとしています。


◇接種なし感染は副反応の何倍も強い症状

 中高生や働き盛り、子育て中などの若い世代から、ワクチンを接種しない理由としてよく聞かれるのが「副反応がつらいから」「つらそうだから」という言葉です。

 ワクチン注射した局部や筋肉、関節の痛み、発熱、全身のだるさなどにより勉強や仕事、育児に支障が出るのを避けたいというのが本音かもしれません。

 佐藤医師によると、副反応は「新型コロナに疑似感染した状態で、実際にワクチン接種なしで感染した場合はその何倍も強い症状が出ると考えていい」のだそうです。

 とはいえ、なかなか接種に踏み出せない人に向け佐藤医師が提案しているのが武田・ノババックス社製のワクチン(以下ノババックス)です。副反応の発現頻度はファイザー社製やモデルナ社製の3分の1〜4分の1とされます。

◇ワクチンごとの比較でも低い副反応

 厚生労働省の研究班が18歳以上の人を対象に3回目接種での副反応をワクチンごとに分析した結果、発熱(37・5度以上)した人の割合はモデルナ社製(モ社)が62・9%、ファイザー社製(フ社)が39・7%だったのに対し、ノババックス(ノ社)は10・3%でした。

 同様に──接種部位の痛みはモ社94・1%、フ社92・1%、ノ社65・5%▽全身のだるさはモ社75・6%、フ社69・0%、ノ社39・7%▽頭痛はモ社64・5%、フ社55・1%、ノ社27・6%──で、明らかにノババックスは副反応の割合が低いことが裏付けられました。

 また、初回接種(1、2回目)がファイザーで3回目がノババックスだった人のうち、3回目接種後の体調については「楽だった」と回答した人の割合が80・9%とほとんどで、「変わらない」が12・8%、「つらかった」は6・4%でした。これらのうち、接種翌日に仕事などを病欠した人は5・17%でした。

◇オミクロン対応ワクチンとも同等の効果

 ノババックスはB型肝炎ワクチンなどで実用化されている「組み替えタンパクワクチン」という種類で安全性は担保されています。

 体内で新型コロナに似たタンパク質を作って抗体を生み出し免疫力を高めるファイザーやモデルナのm─RNA(メッセンジャーRNA)ワクチンとは違い、組み替えタンパクワクチンは人工的に作ったタンパク質と免疫反応を高める補助剤(アジュバント)を接種するため、体質などに関係なく安定した免疫を獲得できると期待されています。

 従来株(アルファ、ベータ、デルタ)用に作られたワクチンですが、オミクロン株に対する感染抑止効果(4回接種でさらに強化)、高い重症化予防効果も確認されています。

 また、有効期限は6カ月間とほかのワクチンよりも長く免疫力が維持され、万一、感染した場合の後遺症抑止にもなるため、佐藤医師は「ぜひ、選択肢の一つに考えてもらいたい」と呼び掛けています。

◇副反応予防に前投薬−延岡市医師会独自のプログラム

 どうしても副反応の不安があったり、リウマチ、血液の疾患、がんなどでためらいがある接種希望者に向け、延岡市医師会では前投薬プログラムを用意しています。

 これは接種前にステロイドや抗ヒスタミン剤を使用することで、あらかじめ副反応を抑える市医師会独自の接種法です。医師の処方箋と、高額ではありませんが自己負担が必要です。

 国内では今年の秋−冬、早ければ夏にも第8波を超える感染規模の第9波が起こる可能性が指摘されており、佐藤医師は「ワクチンを接種した人と接種していない人で2極化する恐れがある」としています。

 このため、「重症化や後遺症、周囲へ感染させることに比べれば、(副反応やある程度の自己負担があっても)接種しておくことのメリットの方がはるかに上回るのではないか」と理解を求めています。

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